叔母(父の姉)の墓参に出掛ける。
随分と昔の話になるが私が幼き頃は、両親は商売で忙しく、我々兄弟の世話が十分に出来なかった。
そんな事情で、自分がよく弟二人を連れ、叔母の家を訊ねたものだった。
以来、独り暮らしの叔母を二十数年支えてきた。
私の事業が成功し、順調だった頃は何かと周りに寄ってくる者達もまた叔母の周りに集まっていた。だが、世間とは冷たいものであり、バブル崩壊とともに私の事業が落ち目となると、まるで腫れものを避けるように遠のいていった。
そんな折、叔母は93歳で没した。
葬儀当日は私の役割も除外された。叔母が私と妻を頼りにしていたことを思うと辛く、くやしくてならなかった。斎場にて皆の後を妻と二人で歩いた時を思うと今でも切ない気持ちが込み上げてくる。
あれから十数年、年数が経つに従い墓参りする親戚も今では皆無である。
「偉い人ではなく、立派な人になりなさい。」
60年前、叔母に言われた言葉を思い出した。
私の人生の挑戦はまだまだ続く、当時を思い再び心が踊った。
人生、この上ない時もあれば落ち目の時もある。
世間も親類も一度落ちた者には冷たいものだ、だがその時差しのべられたわずかな手は今も私を生かし、復活させてくれた。何が貴重なのか、私にも僅かながら理解し始めている。
妻と共に叔母の墓前に手を合わせることができた今日をありがたく思う。
100年に1度の不況を戦う若き経営者達へ、諦めず進んでもらいたい。その先に必ず道が開けるのだ。